今日も萌えてます

白帯ライト級腐女子のBLまんが感想

『関根くんの恋』

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作家:河内遥さん

秀逸!まったく無駄がなく完璧です。伏線は全てきれいに回収されます。

めちゃコミックのあらすじは次のとおり
世にも稀なる残念な男・関根圭一郎、三十路。仕事が出来て男にも女にもモテるイケメンエリートだが、「鈍感・受け身・器用貧乏」の三重苦がたたって、どこかピントのずれた人生を送ってきた。一念発起した関根君が向かったのは、小さな手芸用品店。編み目を数えるうちに思い出すのは、過去の忌まわしい記憶と、数音先輩の細い細い身体の感触。そして出会った手芸屋の孫娘サラ。ついに関根くんの恋 が始まる...かも

冒頭の紹介で表される関根くんは
 世界は幸福な人間と不幸な人間とでできている 関根圭一郎を端的に云い表すなら  罪深い無知とかなしい完璧 そんな稀に見る残念な男の一部始終 とくとご覧あれ

ふふふ、もはや読むしかありません。

イケメンという設定において、甘い感じでもキザな感じでもなく、渋くもないし、どのジャンルのイケメン?と悩んでしまいます。神経質さが際立つ感じです。傍目に映る印象は機嫌悪そう、憂いを帯びてる、そんなイケメン。
容姿端麗、背も高く、スポーツ万能で成績優秀のレベルが尋常じゃないとなれば、愛想なしでも周囲は逃してくれません。何にも興味を持てないのに、何をしたって完璧にこなせてしまいます。女は勝手に寄ってきて、不釣り合いを自覚して必ず離れていくのループです。空っぽな自分に嫌悪して、本屋で目についた手芸の本から編み物を始めようと思いつくわけですが、入った手芸店の店主が胡散臭い爺さん。突然マジックを始めます。受け身が染みついている関根くんは爺さんのペースに巻き込まれ、毎週小一時間、手品を習うことになるのです。爺さんの孫娘とは店で出会い、最初は「あの孫は鬼門だ」なんて思っていたのですが、なりゆきで孫のもとで手芸を始めます。ところで、この手芸ってところが、なんかわかります。セーターが編みたいとか、そういう目的ではなく、ただただ編みたいという感覚には共感するところがあります。もちろん完成させるものを設定して編むのですが、妙に集中できる、無心になれるようなそんな感じです。ただ当初の関根くんは真逆に陥りました。編み目を見ているうちに、編まれたそろばん入れとともに子供の頃の記憶が浮かび上がり、小学校低学年の電車通学中の関根少年はオッサンの痴漢被害に遭っていたようです。「単調だとよけいなコトばかり考えてよくないみたい」と小刻みに震えながら孫に言います。「この人 何がしたいの?」と怪訝に思いながら、複雑な編み方を勧め、「この人 見た目のわりに かなり難儀なひとなのかも」と見抜きます。

なんといいましょうか、説明の難しい状況や感情の表し方が絶妙で、ストーリーを追うのではなく関根くんのこじらせ具合やズレっぷりが読むごとに浸透してきます。

冒頭のとおり、関根くんは優れものなのに残念極まりない。その苦悩を見ていると助けたくなります。爺さんの孫、サラちゃんは明るく自然体でホントにいい子ゆえ、だいぶ年下にもかかわらず庇護欲をくすぐられてしまいます。

関根くんは簡単に恋に落ちたり致しません。というかできません。単純なやさしさも持ち合わせてはいません。断れず、巻き込まれ、応じるを繰り返してきた人ですから能動的なわかりやすい優しさなど発揮できないのです。それでも結局はお人よしなのかな。

そんな厄介な関根くんと狡さのないフラットなサラちゃん。関根くんのズレを吸収フォローできるのはサラちゃんしかいないのかも。とはいえ二人の思いは年単位ですれ違って、ズレズレのまま最後までもつれ込みます。関根くんの想いを理解したサラちゃんから「おそろいの気持ちだと思います」と告げられた時の関根くんのドキドキと感激は最高潮。受け身男とはいえ経験値は高いので、あっという間に結ばれます。めでたしめでたしだな。

全55話中、51話にて、夜道の帰りすがら、ずっと孫と呼んでいたサラちゃんのことを、「一度でいいから 声に出して名前を呼んで 振り向く姿を見てみたかった」と関根くんが思うシーンがあります。ここが一番好きです。叶わない、好きな気持ちの切なさにきゅんと来ます。

最終話、結ばれた朝、まだ眠っているサラちゃんに声をかけます。「き...如月皿 なあ如月...サラ」 ...はあい サラちゃんの返答に、関根くんは「こんなにいちいち感動すんのか」と思うのです。ふふふ、51話と繋がっています。なんか嬉しくなってしまいます。