今日も萌えてます

白帯ライト級腐女子のBLまんが感想

『ファザー・ファッカー』

f:id:nyanyanyawan:20210823114701g:plain
作家:
暮田マキネさん

血の繋がらない父と息子のBLです。これは困難ですな...最も成立しない組み合わせではないでしょうか。

電子書籍でなかったならば出会えなかったと思います。関連おススメに感謝。

こんなコトってあるでしょうか?想像しがたい設定ですが、いろんなことを飛び越えて、唯一の対象、唯一の愛情について、沼に足を取られるようにハマりました。

21歳で死んだ実の父マコト(真)
身ごもっていた母サエ
父の親友メイ(明)は友情からサエと結婚。
マコト(真)とサエの子であるシン(真)が誕生します。

メイは親友だったマコトに恋していました。メイはゲイです。女を抱くことはできません。その事実をサエは知りませんでしたが、そもそも恋心のない二人は夫婦としては成立していません。サエはシンが中学に上がる頃には家を出ています。なのでメイとシンは父子家庭。

さて、この息子、シンが聡い子なのが怖い。読み手の私は父メイに感情移入していました。息子は「秘密体質の割に不用心なんだよね」と親の事情を承知済みなのだと告げます。学生時代の三人の写真と裏書を見て、父の想いを理解していました。面影どころじゃなく、そっくりに成長していく姿を自覚しています。
「しょうがないと思うよ 明が俺を物欲しそうな目でみちゃうのも、俺が寝ている時に触ったりキスしちゃうのも」
シンが誕生した時から父親を務めてきたメイが、こうも暴かれては絶句ですね。震えます。罪悪感に潰れそうです。ごめん...ごめん...
その直後にシンの告白...「何を謝るの? 嬉しいのに俺」血のつながりがないって知るずっと前から愛していると言います。
おおおー、これはどうでしょう?もしも血がつながっている場合はさらにカオス!血縁なくてヨシとすべきか?と論点ズレズレな心配を沈め、二人の今後の関係を考えます。

「21歳で止まったマコトの人生を進めてあげる してくれたことも してくれなかったことも 俺ならしてあげられる」
ずっと好きであり続ける永遠に不在の人とそっくりな息子に、こうも言われて、さぁ、どう応えればよいのでしょう。悩みます。欲も理性も肥大しますが、やはり欲が勝るかな?
シンとメイは禁断の道に進みます。シンはまだ高校生なので週末以外は親子として過ごし、土日48時間は恋人タイム。淫行とか、そんなレベルの話じゃないですね。

ここまでの内容は『ファザー・ファッカー』ではなく、『All things I Know』で、前身の話です。

闇の深さは息子シンの方が勝っていると思います。そりゃまぁ、父メイの執着も相当ですけれど、父子以前に、血の繋がりに関係なくメイだけを愛し続けているわけですから。これって、母サエがは知るに耐えられないことでしょう。とはいえ大人な分、メイも悩みます。罪深いモラトリアム...うん、そうね、そのとおり。息子の人生の可能性を考えると、終えなければいけないと、やっぱり大人なら、親なら、考えますね。

でも結局のところ選びたい人生を選ぶのがよいと思います。
二人の想いは一致しているわけですし、覚悟して愛し続けることを積み重ねるより他はないと思います。私はいつもこの結論に達してしまいます。だって、愛し続けるって難しいですから。メイは20年くらいマコトを想い、その息子のシンをも愛していますから、別れたとて、この先に愛せる人の登場は考え難いです。シンについては、若さから可能性を考慮しても、メイへの想いが深過ぎて他の選択肢はないと思います。

もしも実父であるマコトが生きていたら、どうなっていたのだろうかとシンは思います。
「家族を欲しがっていたマコト」
「家族にはなれなかった明」
「家族なんていらない俺」
シンの性格は今とは別でしょうね。遺伝子と環境...

別れのシーンで、「捨てないで...っ」と言うシンに、「俺のものだと思ったことは一度もないよ」と応えるメイ。...泣けます。

この世界観、きっと実写だったら見てられない。まんがで、且つ作者、暮田マキネさんの絵だから美しく感じられるのかもしれません。
美しいは正義だわ。全肯定で絶賛です。