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白帯ライト級腐女子のBLまんが感想

『椿町ロンリープラネット』

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作家:やまもり三香さん

ドラマ化された『ひるなかの流星』も読みましたが、同作者の作品では『椿町ロンリープラネット』が断然一番好き。読んで間違いなしの名作です。

まず主人公が健気。16才の女子高生です。母親はすでに他界、お人よしな父親は知人の借金の保証人となり、突然マグロ漁船に乗り込むため家を出ます(元はトラック運転手)。住まいも失い、住み込み家政婦になります。はい、もうテッパンですね。苦労人です。応援したくなります。序盤から読者を味方に付けます。
父親のツテで知り合いの小説家の元へ参ります。主人公の名前は”ふみ”、そのババくさい名前(全国のふみさん、ごめんなさい)から年配家政婦を想像していた小説家の名前は木曳野暁、主人公ふみは文豪をイメージ。そんなわけで双方勘違い。暁はふみに邪険な態度をとります(そもそも愛想無いタイプ)。ふみの頑張りにも気遣いにも「家政婦のくせにいちいち口出しするな 家族ごっこなら自分の家でやれ」と突き放します。ふみが買い物に出掛けた後、キレイにきちんと片付いた家の中を見渡す暁。そう、ふみちゃんは16才にして、きちんと家事ができる子です。母親亡き後、家事を引き受け、父親を助けてきたしっかり者なのです。暁はふみの事情を知りませんでした。編集長の頼みだから承諾したけどが、あんな若いのならもともと家政婦なんて受けなかったというわけです。そもそも16才の女の子が29才の男性宅に住み込みですよ?父親も編集長も何故OKなんですか?なんて余計な疑問は排除して続けます。ふみは買い物から帰れずにいました。帰る家も待っている人もいない、そんな想いを胸に、以前住んでいたアパートの前に佇んでいるところへ暁が迎えに来ます。「オイ 荷物かせ 帰るぞ」と。

初対面での印象は良いものではありませんでしたが、お互いを知るうちに、その人柄への信頼が芽生えていきます。暁はだいぶ、ふみは少し変わり者ですが、二人の生い立ちや性格が、他の誰でもなく、この二人だからこそわかり合える唯一無二の存在となっていきます。その過程が誠実にコミカルに描かれていてほっこりします。

登場する友人もいい人たちで、特に暁の幼馴染かつ仕事仲間でもある吾郎は、要所要所でさりげなくナイスアシストを放ちます。途中、ふみに恋心を持ちますが裏切りません。暁の親友なのです。カンが良く器用な吾郎は、暁本人が自覚するずっと以前に「可愛くてほっとけないから 俺が守ってやりたい」そういうことだなと、見透かしていました。わかっていても言わずにいるところが”男”だし”大人”、そんな吾郎さんが素敵です。

じんわりと、やさしさ、思いやり、温かさが伝わってくるストーリー。キャラクターが魅力的で、絵も魅力的。全てがいい完璧な五つ星です。